何かと話題の選択肢ゲーム、「Detroit: Become Human」をプレイしてみました。世界は、物語はすべて自分の選択次第。小さい選択から大きな決断まで無数の選択に迫られるこのゲームはまさに人生そのもの。自分だけの物語が楽しめる面白いゲームだったのでご紹介したいと思います。
テーマはAIが自我を持ってしまった世界
AIが急速に発展していく中で最近よく耳にすることのひとつは人間は将来AIに仕事を奪われるんじゃないかという懸念です。
このゲームではそれが現実になった社会を描いていて、さらには自我を持ち始めたアンドロイド(AI)ロボットたちが人間社会において自分たちを一つの種族として認めてほしいと主張までする始末。
高度のAIプログラムのエラーともいえる現象から人間の感情らしきものが芽生えて混乱しながらロボットとして従順に生きるか、感情を爆発させてもっと人間らしくなるか、悩ましい選択を迫られる状況がゲームを終えるその瞬間まで続きます。
決して明るい雰囲気のゲームではなく、どちらかというと重い空気の中、ユーザーは差別され続けるアンドロイドになってゲームを進めることになります。
ゲームを進めながら始終感じていたのはこういう未来も十分ありえるということ。
実際に現実社会を見ていて思うのは、AIやロボットなど、自ら進んで研究をしている科学者や専門家たちはその大半がポジティブの塊のような人が多く、人類のために、人間のためにと、明るい未来を夢見るロマンティストがほとんど。
そのようなポジティブで行動力があって頭の切れる人たちが勝手に世の中をどんどん変えていっていますが、その変化についていけず淘汰される人は多く、社会のあっちこっちから予想外の出来事や問題が起きます。
ゲームではまさにそのような世界を背景に、アンドロイドと人間の対立と共存の可能性をプレイヤーに託しています。
多数の分岐、それに伴う圧倒的な量のストーリー
無数の選択肢から様々な分岐へと進んでいきます。そしてその分それぞれ異なる演出やシーンが用意されていて、場合の数全体で考えるととんでもない量のストーリーが存在するわけです。
実際にゲームのボーナスメニューからアンロックして観ることができる制作秘話の映像で、制作スタッフは口をそろえてとんでもない量の作業だったと言っているほど、膨大な量のシーンがすべて収録されています。
また、プレイ途中、いかに細かく周囲を観察したりオブジェクトに触れたかによってアンロックされる選択肢も増減するなど、緻密に作りこまれています。
人生は一度きり、選択も一度きり、リセット不可ですが、ゲームだといくらでも復活できるし、いろんな選択もできるし、リセットもできます。
ゲームだからこそ、リアルな人生では体験できない様々な「タラレバ」を体験できます。
しかし、まずは途中でやり直したりせずに自分の勘を信じて最後までプレイしたほうがいいです。そうすることで、自分はどのような人間なのかがわかるからです。適性検査のようなものです。
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自分だけの物語を楽しもう
上に述べたように様々な選択ができるが故に自分だけのストーリーが誕生します。映画やドラマなどは制作者が決めた結論を一方的に見させられるだけです。最初から結論は決まっていて、そこに視聴者の意思が介入する隙など存在しません。そのため、あくまでも視聴者は傍観者的立場で受け身になりがちです。
しかし、このゲームでは些細なことから大きな決断まですべてをプレイヤーが自分で考えて選択しないといけません。プレイヤーはもう傍観者ではなく積極的にストーリーに関与し、様々な未来(結果)を導くことができます。
自分の選択次第で、大切な人を失ったり、自分が死んでしまう可能性もあります。自分の決断次第で多数が幸せになる未来を開拓することもできます。
選択ひとつひとつに登場人物間の好感度が変化し、その後の進行に影響を与えたりします。また、その好感度次第では新しい情報も入手でき、選択肢を増やしてより有利に進められたりするのでとても面白いです。
一つのチャプターが終わるとPSN上の友達を含め、全世界のプレイヤーはどのような選択をしたのかパーセンテージで表示してくれるので、自分の選択が、自分の物語が他の人とどう異なっているか確認することもできます。
感情移入しやすいよく出来ているストーリー
著名な画家を介護するマーカス、警部補の補佐役のコナー、家事のカーラ。
それぞれの役割があり、最初は従順に自分の任務を遂行していきますが、あまりにも理不尽な状況下で所有主にも毛嫌いされ、差別を受け続けているうちに、何らかの理由で覚醒してしまう3人のアンドロイド。
いくらロボットとはいえ、見た目も、言葉も、行動も人間そのものなので、プレイ中はロボットであることをつい忘れてしまいます。そして社会において絶対弱者の立場で奴隷のように扱われるうちに自然とモヤモヤする何かが、怒りのような何かが、既得権者や支配者に対する反抗心のようなものがこみ上げてきます。いつの間にか主人公のアンドロイドと自分を同一視している自分に気付きます。社会において弱者の気持ちがとてもよく伝わってきます。弱者として生きること、差別を受けることがどのようなものかを疑似体験できます。
そのこみ上げてくる感情をどうするかはプレイヤー次第。
ゲームの後半になってくると、3人の運命が複雑に絡み合い、選択一つ一つがさらに重みを持つようになり、プレイヤーが理想と思う状況を導き出すにはどうしたらいいか選択を厳しく問われます。
ストーリー重視のアクションアドベンチャーゲームが好きな人にはオススメ
正確なジャンルは何なのかよくわからないのですが、一般的に言われているのは、アドベンチャーゲームだそうです。
「Heavy Rain」や「Beyond: Two Souls」などクアンティック・ドリーム流ゲームが好きな人は絶対に後悔はないと思います。
クアンティック・ドリームのゲームだけあって全体的に重くて寂しくて悲しい雰囲気、そしてずっと雨か雪が降るそんな世界の話ですが、そのような状況下でも自分の頭で必死に考えて行動し、世界を変えていくという、ただ楽しむだけのゲームではなく色々と考えさせられるそんなゲームです。
なんでも最初から結論が決まっているリニアなゲームに飽きてきた人はぜひプレイしてみてください。
世の中はグレーだらけで正解なんてないように、このゲームにも正解なんてありません。すべてはあなたの選択次第で世界は再構成されます。そこには悲しい結果もあるかもしれないし、多少はハッピーになれたかもしれないし、誰かの犠牲で手に入れる幸せがあるかもしれません。
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